【planetarian-サイドストーリー-】星座と成すもの(前編)

こんにちは!

 

今回はKey作品のplanetarianサイドストーリーについて紹介します。

この作品はゲームではなく小説です。

まず本編のplanetarianというノベルゲームがあり、それに付随する形でこの小説があります。

そのため、本編をプレイした上で読むことが前提とされています。

本編の解説・感想はこちらをご覧ください↓↓

hekoheko.hatenablog.com

 

私は本編を終わらせてすぐさまこの小説をダウンロードしました。

小説はスマホアプリで400円で購入しました。

本来はPC版、PS2版の特典として付けられていたもののようです。

 

このサイドストーリーは以下の4つの話から構成されています。

1. 雪圏球

2. エルサレム

3. 星の人

4. チルシスとアマント

これらの話はドラマCD化されており、1の雪圏球は2021年にOVA化、ゲーム化され、3の星の人は本編アニメ化と同年2016年に映画化しています。

 

それでは、各話のあらすじと感想を紹介します。

ここからはネタバレありなので未読・未視聴の方はお控えください。

 

1. 雪圏球

舞台は本編ヒロインのプラネタリウム解説員であるほしのゆめみ(以下ゆめみ)の昔の話です。

時代はまだ世界が荒廃していない平和な時代。

ゆめみはプラネタリウムで働いて10年目を迎えましたが、最近勤務時間内に職場を勝手に離れて外出するようになります

一体それにはどういった理由があるのか?

というのが大まかなあらすじです。

 

話の主人公はゆめみではなく、同じ職場で働く解説員主任の里美さんです。

ゆめみは本編でもおしゃべりで命令を無視した勝手な行動をすることで来訪者の屑屋を悩ませていますが、その性格はこの頃から健在でした。

そんな振る舞いに頭を悩ませる里美を始めとする同僚たち。

邪心のない素直な振る舞いがゆめみらしさでありますが、人間とのコミュニケーションの上ではそれだけでは上手くいかないことが本編と同じくここでも描かれています。

 

話を戻しますと勤務中の無断外出を繰り返すゆめみをある日、里美は尾行してみます。

しかし外の世界はロボットにとって優しいものではありません。

ゆめみが就任した10年前は世界初のロボット解説員として脚光を浴びましたが、10年後の世界ではロボットは一般的な存在になり、その結果多くの人が仕事を失い、ロボットに対して反感を持つ人もいる社会です。

そのため、ロボットを快く思わない人たちが町にはいます

それでも繰り返し無断外出を繰り返す理由とは?

 

尾行した先の公園でゆめみはバッテリーが切れて動けなくなってしまいます。

そこに通りかかった小さな女の子はゆめみがロボットだと分かるとゆめみのことを叩き始めます。

なぜなら女の子の父親はロボットに仕事を奪われしまったからです。

やむを得ず止めに入った里美によって事なきを得ます。

女の子が去った後、里美はバッテリー切になって動かなくなったゆめみに愚痴を吐きます。

しかしゆめみは辛うじてまだ稼働しており、前に同僚に黙って愚痴を聞いてあげてほしいと頼まれたのでバッテリー切れのフリをしていただけでした。

そんなゆめみに対して里美は自分が男だったらプロポーズしていたかもと言うと、ゆめみはもう婚約していると爆弾発言!!

 

実はかつてゆめみのことが好きだったある男の子がゆめみと結婚したいから10年後迎えに行く、だから仕事を抜けだして外で待っていてほしいと約束をしていました

その約束を果たすためにゆめみは無断外出を繰り返していました。

結局10年ぶりにその少年は再びプラネタリウムを訪れ婚約破棄を伝えて去って行きました。

これで約束は解消されゆめみの無断外出はなくなりました。

今回のように隠されたプログラミングが再発しないようにすることもできましたが、プログラムを書き換えるとゆめみの性格が変わってしまうので里美はそのままでいいと言います。

里美もゆめみに日々手を焼いてはいたものの、そのままでいてほしいと願っていたのです。

 

これが第一章の話です。

昔からゆめみはゆめみだったのだなとほんわかした気持ちになりました。

里美視点のプラネタリウムや仕事への考えは現代の我々と同じようなものであり大人であるほど共感しやすいものに感じました。

なんだかんだ里美もゆめみのことを大事にしているのだなと言うのが伝わって来てよかったです。

ちなみにゆめみが付けている色が変わるリボンは里美の提案でプレゼントされたものだと最後に明かされます。

ゲーム本編では同僚たちとの別れのシーンが登場しますが、あの同僚が里美だったのだろうなと思うとジーンと来ます。

 

個人的に印象だったのは、女の子がゆめみを叩いた後のやりとりです。

里美が痛くなかったかゆめみに聞くと、ゆめみはロボットだから苦痛は感じないと答えます。

それに対して里美は、ゆめみが感じるはずの痛みは周りの人が代わりに受けていると述べています。

この部分を読んでゲーム本編のラストを思い出しました。

シオマネキの攻撃で下半身を失ったゆめみを屑屋は心配しますが、同じようにゆめみはロボットだから苦痛は感じないと答えます。

このシーンで感じた感情はまさにこれだったのだとハッとしました。

この時その苦痛をゆめみの代わりに受けていたのは屑屋だったのです。

そういったことからこの一文が一番印象に残りました。

 

ちなみにタイトルの雪圏球とはスノードーム、本編では別称のスノーグローブのことを指しています。

スノードームは和製英語なのでスノーグローブが正しいのですが、聞き馴染みがなかったのでピンときませんでした。

話の中では新商品の案として出てくるだけで物語とは直接関係はありません。

 

アニメ版を視聴した

planetarianが生まれて15周年記念にこのエピソードがOVAとしてアニメ化+ゲーム化しました。

これはクラウドファンディングによって実現したものです。

というわけで小説版を読んだ後にアニメ版を視聴しました。

小説の大筋は汲みながら、多少の改変がありました。

 

・ゆめみ就任初日が描かれている

・ゆめみが初公演で投影機のことをイエナさんと名付ける

・ゆめみ就任10周年の公演が行われる

・里美がスノーグローブを購入する

・婚約の約束が10年後から9年後に変わっている

・婚約破棄カップルがそのまま帰らずに10周年公演を見ていく

・ゆめみにリボンをプレゼントしたときの様子が描かれている

 

見た感想としては小説だけのイメージが視覚化されてより鮮明になってよかったです。

それにイエナさんを名付けたのはゆめみであることやリボンをプレゼントした場面など小説にはないシーンが追加されていたのもよかったです。

 

小説ではほぼ出番がなかったスノーグローブがちゃんと話に盛り込まれたのも、タイトルになる以上必要なことだったとはいえ分かりやすさに一役買ったと感じます。

細かいですが、実は本編のアニメ版の第一話の冒頭に屑屋がプラネタリウムの建物に入った時に埃を被ったスノーグローブが登場しています。

スノーグローブは里美が無断外出したゆめみを探すときに買ったもので、公園でゆめみに愚痴を吐くシーンでスノーグローブ越しにゆめみを見ています。

里美にとってはこれから先もずっと一緒に働きたいという意味でそこに写した温かな気持ちから来てはいるのですが、実際はずっと先の未来まで、人がいなくなった世界でも一人ぼっちにさせる檻のように結果的になってしまうのは悲しくもあります。

 

また、平和な日常の街並みを見たのですが、思ったよりも未来の町ではありませんでした

アニメ版だともっと町の様子も描かれていたと思いますが、ゲーム版はそこまでは分かりません。

平和な時代の町並みは私たちの現代と同じで、ただそこにロボットが加わっただけでした。

アニメ版の町並みは静岡県浜松市がモデルとなっているらしいので、今回の景色もそうなのだろうと思います。

 

アニメ版を見ていてプラネタリウムの同僚たちの雑談でゆめみが「結婚したら退職しなければいけないのか?」と質問するシーンがあります。

これは小説でもあったシーンなのですが、小説の内容を知った上で見ていたので「これはゆめみが婚約状態にあるから、自分は結婚したら辞めないといけなくなるのかを聞いていた」ということに気が付きました。

 

アニメ版はすごくよかったのですが、尺の都合上里美の心情はあまり描かれていないのがちょっと残念でした。

特に私が印象を受けたロボットの痛みを周りの人が代わりに受けているという一文はほしかったなと思います。

それ以上に追加されたシーンがいろいろあったのでこれもよかったです。

10周年記念公演の時にゆめみが花束を受け取る姿はゲーム本編のあの姿とどうしても重なってしまいます。

 

2. エルサレム

二つ目の話は一つ目の話とplanetarian本編の間の時代です。

そのため、ゆめみと屑屋は出てきません

平和な時代は終わり、世界規模の戦争が勃発します。

核弾頭によりイギリスが消滅するなど甚大な被害が及び人口も100億人から5億人まで減ってしまいます。

それでも一旦戦争は落ち着き、停戦となった頃のお話です。

 

主人公のマードックを始めとした軍小隊は南米パタゴニアの荒野にぽつりとたたずむ教会を目指します。

その教会では来る者は見境なく殺されるということで、もう戦争は終わったのだと説得をしにマードックは向かいます。

しかし鐘楼からのスナイパーによって小隊のメンバーは次々と射殺されてしまいます。

同じスナイパーであるマードックはこんな風が強くでたらめに吹き荒れる状態の中で的確に打ち抜くスナイパーをようやく双眼鏡でとらえることができます。

その姿はなんと金髪の修道女でした。

仲間は次々と打ち抜かれ、中には兵もパニックになって逃げ出し、どうにか修道女を狙撃できた時にはマードック一人だけになってしまいました。

 

マードックはようやく教会に入れたものの、そこで待っていたのは同じ姿形した修道女たちでした。

彼女らはロボットマードックを攻撃してきます。

どうにかそれらも倒し、教会の探索を続けると地下へと続く階段を見つけます。

階段を降りると地下コロニーとも呼べるアリの巣のような空間が広がっていました。

しかしそこのは誰も居ません。

奥に進むと逃げ出したはずの同じ小隊のサリンジャーがいました。

そして今回の派遣はサリンジャーの計画によるものだったと明かされます。

 

まずこの地下コロニーは宗教団体が戦争中に安全に暮らすために作られたものでした。

外部からの襲撃から身を守るために宗教団体は技術者であるサリンジャーにロボットの開発を依頼します。

そうして作られたのが修道女のロボットであり、特定の条件が揃った場合人を攻撃できるようにプログラムされていました。

そのためサリンジャーは修道女ロボットに攻撃されることなくここにたどり着けました。

彼は修道女ロボットの行動範囲を規定するためにこのコロニーの存在はもちろん、構造も熟知していました。

そして月日が経ち、内乱でコロニーから人がいなくなった時にサリンジャーは自分がこのコロニー神の国を独占するために今回の派遣を計画しました。

わざわざ小隊を率いることになったのは修道女ロボットの強さを確かめるためでした。

 

こうして計画の全貌が明かされ、サリンジャーはたくさん修道女ロボットにマードックを襲わせます。

逃げながらマードックは窮地を脱する方法を考えた結果、コロニーで火災を起こします。

こうすることでロボットの優先事項が消火活動に切り替わり、マードックは無事になりました。

しかしそのまま逃げるのではなく、マードックは別の場所に移動して何時間も身を隠します。

すると火の手はコロニー全体に広がり、どこかに隠れていたサリンジャーは修道女ロボットとともに地上を目指して脱出を図ります。

その一瞬を狙ってマードックサリンジャーと修道女ロボットを一掃することに成功します。

 

地上に出て疲労困憊のマードックは横になって救援を待ちます。

そこにやって来たのは別の修道女ロボットでした。

致命傷を受け、もう動けないまま殺されるのをマードックは待ちましたが、その時に現れたのがサリンジャーでした。

重傷を負ったサリンジャーを見ると修道女ロボットはサリンジャーの治療を優先事項と見なし、マードックをそのままにしてサリンジャーを抱きかかえ、火の海と化した地下の「神の国」へと降りていきます。

今度こそ脅威から逃れたマードックは救援のヘリコプターを待つのでした。

 

以上が話の内容です。

 

私は戦争ものや銃火器についてほとんど詳しくないので序盤は読んでいて苦痛でした。

第一話の雪圏球と比べると固い内容ですし、銃火器の名前や解説も難しい話に感じます

しかし教会から地下コロニーに入った後は続きが気になってドキドキしながら読んでいました。

 

教えはどうなってんだ 教えは!(ロボット三原則

この話で個人的に大事だと感じたことはロボットが人を襲うということです。

planetarian本編の世界はこの話よりも未来の話で、その世界では人との戦争というよりも人と機械との戦いになっています。

本編の終盤はヒロインのロボットであるゆめみが自立型ロボットからの攻撃を身を挺して受けるシーンがあります。

前回の記事でも紹介しましたが、ロボット三原則というものがあり、その中にはロボットは人を危険にさらしたり、危害を与えてはいけないというものがあります。

ゆめみは旧時代のロボットのためこの原則を守っていますが、自立型ロボットは新時代とも言える存在でその原則を守っていません。

どうして原則を破ることができたのか、それがこの話で明かされています。

 

今回の話に登場する修道女ロボットもロボット三原則を守っています

その証拠に消火活動を優先したり、ケガを負ったサリンジャーの治療を優先しています。

では、どうしてマードックや他の小隊のメンバーが攻撃されたのかと言うと、人間と認識されていなかったからです。

修道女ロボットは宗教団体のために作られたもので、武器を持っていなかったり、十字架を掲げている人を人間と見なすようプログラムされています。

反対に武器を持ち、十字架もない存在は悪魔と見なされ、人間を守るために修道女ロボットは排除しようとします。

こうすることでロボット三原則を無視することに成功しています。

個人的にはこれが旧時代のロボットが新時代の無差別殺人ロボットに変わる特異点だったのではと思っています。

 

神の国

planetarian本編では天国や神様がもしいるならば、という話が出てきます。

このエルサレムという話では宗教団体が作った地下コロニーを神の国つまり天国と呼んでいます。

神の国」は居住区もあり、自給自足できるよう森林もあり、図書館もあり、凄惨な戦争中の世界と比べると天国と言っても過言ではありません。

しかし、その一方で居住区にも一般民と上級民の区別が明確にされており、人は皆平等というわけではありません

planetarian本編でヒロインのゆめみは「天国を、ふたつに分けないでください」と願っており、それは人間とロボットを別々の天国に分けてほしくないという意味です。

しかし神の国」はロボットはおろか、人間さえも二つに分けてしまっています

そう思うと人間よりもロボットの方が崇高な願いを持っているように感じます。

 

エルサレムの意味

タイトルのエルサレムはこの話ではたった1回だけ登場します。

それはマードックが度々口にする歌の一節です。

エルサレムが舞台でもないですし、話の中心というわけでもありません。

そこでエルサレムとこの作品について共通点を探してみました。

 

まずエルサレムと言えば世界三大宗教の聖地として知られています。

今回の話が教会を舞台としており、地下コロニーは「神の国」と呼ばれていることからまさに聖地となる場所という点が共通しています。

次にエルサレムイスラエルにあり、イスラエルの国旗は六芒星があります。

プラネタリウムをテーマとした本編と星は切っても切り離せないものなのでこれも関連しているように感じます。

そしてエルサレムには岩のドームという有名な建築物があります。

その見た目をプラネタリウムのドームと見立てたのではというのも考えられます。

第一章と同じくタイトルそのものが話の中心でもないのは何だか不思議に思います。

 

今回はplanetarianのサイドストーリーの小説から最初の二つの話、「雪圏球」と「エルサレム」を紹介しました。

残り二つは次の記事で紹介します。

それでは!!