こんにちは!
今回はノベルゲームATRI -My Dear Moments-について紹介します。
このゲームは私にとってかなり大きな影響を与えたゲームなので思い入れがとても深いです。
どういったゲームなのか、どんな影響を与えたのか、感想を交えながら紹介します。
どんなゲームなの?
まずどういったゲームなのか紹介します。
ATRI -My Dear Moments-は2020年にWindows向けに発売されたノベルゲームで、キャッチフレーズは「沈みゆく世界で、君を見つけた。」です。
現在はスマホアプリ、Switch、Steamでも購入可能です。
今回私が購入したのはSteam版です。
アニプレックスが新たに立ち上げたノベルゲームブランドとして発売された最初の2作品のうちの1つです。
シナリオは以前紹介した「この大空に、翼をひろげて」を担当した紺野アスタさんが手掛けており、2024年にはアニメ化が決定しています。
ストーリー
キャッチフレーズにあるように物語の舞台は海面上昇により多くの陸地が失われた日本です。
主人公斑鳩夏生(いかるが なつき、以下夏生、画像左)は祖母が住んでいた田舎へと移り住みます。
そこで海に沈んだ祖母の倉庫でヒューマノイドロボットのアトリ(画像右)と出会うことでひと夏の物語は動き始めます。
ネタバレなしの感想
まさかここまで感動するとはプレイするまで思いもしませんでした。
世界観、キャラクター、音楽、そしてストーリー、どこを取っても素晴らしいの一言です。
プレイ時間は10時間ちょっとなので休日2日あれば終わることができます。
ストーリーは夏生とアトリに焦点を当てたもののためアトリルートしかありません。
しかし簡単な選択肢とエンディングが3種類あります。
そういったことからノベルゲームを普段プレイしたことがない人でも手に取りやすいです。
私もノベルゲームの多くを知りませんが料金が安い所も魅力の一つです。
定価でも2000円くらいですし、一般的なノベルゲームの金額を考えると良心価格です。
そういった意味でもノベルゲーム初めての人でも手に取りやすくなっています。
ストーリーは起承転結で分かりやすく、終盤にかけての感動の嵐がとんでもないことになります。
最後までプレイした後にオープニングを聞くともう感動です。
今でもオープニングはリピートして何度も聞いているくらいです。
ここからネタバレ込みの感想
簡単にゲームの魅力に触れたところでここからはネタバレ込みの感想です。
まだ未プレイの方は見ないようにしてください。
先ほど触れた起承転結についてまずは見てみましょう。
起:夏生とアトリが出会う
承:アトリを通じて住民と交流を深め、夏生が変わっていく
転:アトリの本性を知る
結:感動のエンディング
うっかり未プレイの方が見てしまってもいいようにやんわり書きました。
CGが綺麗で素敵だった
冒頭、夏生は亡くなった祖母が遺した潜水艦でサルベージしてアトリを見つけます。
アトリを引き上げた直後夏生は海へと落ちて死を覚悟しますがアトリの人工呼吸で助かります。
この時のCGで一気に引き込まれました。
何て綺麗な絵なのだと手を止めてしばらく見入ってしまいました。
プレイして新たなCGを見るたびに素敵だなと思いましたし、このゲームの魅力だと感じました。
そしてそのCGによってさらに引き出されるのがアトリの魅力です。
住民たちの魅力
アトリと出会ったは夏生は幼馴染の誘いもあって学校に行くようになります。
これをきっかけに学校の他の生徒たちと交流を深めて心を殻に閉じ込めていた夏生は明るさを取り戻していきます。
幼馴染の水菜萌はずっといい子だし、その従兄の竜司は夏生に対して最初敵意を持っていたのに大親友になるし、同じく敵意をむき出しにしていた学校に住んでいる凜々花は好奇心旺盛ないい子だし、こんな仲間に囲まれたらそれは充実した毎日になるよなと感じました。
これもアトリと出会ったことで得られたものであり、素敵だと感じました。
アトリの魅力
このゲームの魅力の一つとしてアトリが可愛いというのがあります。
見た目も可愛いですが、ヒューマノイドなのにドジっ子で、誰にでも人懐っこい愛嬌があります。
見た目に関してはアトリ自身もそのように作られているからと自覚しています。
一方親しまれやすい性格はあえてそのようにしていることが途中で明かされます(ポンコツなのはわざとではない)。
これが明らかになるのは夏生がアトリと恋人になった後に見る日誌です。
これを見たときはかなりショックでした。
アトリが愛嬌を持って接したり、夏生に好意を抱いているというのはそのように振舞うのがいいだろうとプログラムで導いたものだったのです。
ロボットなので心がないのは当然なのですが、普段の振る舞いとのギャップが大きすぎて読んでいる私も落ち込みました。
可愛いという生存戦略
話は逸れますが、私の大好きな漫画に「ぼのぼの」というものがあります。
アニメ化も2回しているのでご存知の方がいるかと思います。
私は小学生のころから単行本を買うほど好きなのですが、その中のあるエピソードに「可愛いと感じる虫」の話があります。
読者からすればそれほど可愛い見た目でもないのですが、登場人物はみんなそれを可愛いと愛でています。
そしてそれはその虫が厳しい自然で敵から身を守るための生存戦略だったと最後に明かされます。
こうやって書くと殺伐とした話に感じますが、実際はもっとのほほんとしています。
要はイヌやネコといった動物も可愛いです。
可愛いが故に傷つけようなんて思えません。
可愛いは正義なのです。
これはアトリにも同じことが言え、アトリもみんなに可愛いと思わせることで自分を守っていたのです。
ロボットあるアトリは人に必要とされることで存在意義を見出します。
マスターである夏生に愛想を尽かされてしまっては無価値になってしまいます。
そういったことからアトリは夏生に好意がもたれるような振る舞いをしていました。
それ以降は夏生の命令で夏生と二人の時は愛嬌を振りまくことをしなくなり無感情なロボットになります。
そして両想いの恋人かと思っていたらむしろアトリは夏生のことが嫌いだとはっきり言われることに。
これは立ち直れないほどショックだったろうと思います。
ロボットに心はあるのか
夏生がアトリに恋愛感情を抱き、両想いだと思った間際ロボットのプログラムだったと分かったのが今紹介したところですが、夏生はアトリに心があると信じ続けます。
それを日誌に残った涙の跡を見つけることでアトリ自身も自分に感情があることを知ったシーンは涙なしでは見られませんでした。
アトリの前のマスターは祖母ではなく、今は亡き夏生の母親でした。
しかし夏生の母親は子供のころからアトリには冷たい態度を取り続けていました。
そんな中母親は学校でいじめられており、アトリは母親を守るためにいじめっこをボコボコに殴ります。
本来ロボットは人を傷つけることができないはずなのにそれをしてしまったことでアトリは欠陥品として追われる身となり、母親からはますます蔑まれてしまいます。
それでもアトリは遠くから母親の成長を見守り続け、夏生が片足を失った事故で母親の最期を看取ります。
その後祖母のところに行き、コールドスリープをして長年の眠りに就きました。
その後夏生にサルベージされるのですが、壮絶な人生を過ごしてきたのは明らかです。
そしてこの記憶によって芽生えたのが「悲しみ」という感情でした。
自身の悲しみを自覚し、大声で泣き続けるアトリのシーンは胸に来るものがあります。
感動のエンディング
その後は感情を自覚したことで以前のように心から夏生に愛嬌を持って接することができるようになります。
しかしアトリの活動限界はもうあとわずかでした。
元々夏生がアトリをサルベージしたのはアトリを売ることで借金を返済するためでしたが、アトリは45日間だけ待ってほしいとお願いします。
それは自身の活動限界を意味していました。
日に日に記憶が消えてしまったり、今までできていたことができなくなったりと人で言う死に向かう衰えを感じられて読むのが辛かったです。
そして8月30日の44日目にアトリは眠りに就きました。
あえてあと1日だけ残してお別れをしました。
アトリは45日の活動限界を迎えると夏生やみんなのことを認識できなくなります。
もはや別物になってしまうのです。
そうなる前にアトリはこの思い出を大事にしたまま眠りにつくことにしたのです。
そしてその60年後、夏生はアトリに会いに行きます。
最期の1日をアトリと過ごすために。
なぜ60年後なのかというと、夏生はアトリと別れる前に世界を救うことを約束し、その実現に多くの年数を要したからです。
問題解決には至らなかったものの多くの実績を残しました。
そして自分の人生の最期の一日をアトリに会いに行くことに使うことにしました。
つまり、アトリも夏生も残された時間は一日しかない状態で再会したのです。
電脳世界での再会だったのでアトリ曰く60年分の体感時間はあるようですが、本当なのかは分かりません。
いずれにしてもお互いの最期の一日を共に過ごすなんてロマンティックな終わり方だと思いました。
オープニングやばすぎ
このトゥルーエンディングの一番最後に流れるのがエンディング曲ではなくまさかのオープニング曲です。
しかしこのエンディングまで見たからこそ歌詞の意味がよく分かります。
私の解釈としてはオープニングの歌詞は夏生がアトリと別れてから再会するまでの気持ちを歌ったものとしてとらえています。
冒頭の
果てない海を越えて
君が眠る 海へと漕ぎ出すよ
は一見夏生がアトリをサルベージする冒頭のシーンのことなのかと思えるのですが、実はアトリと別れた後、60年という果てない年月という海を越えて眠りについたアトリに再会しに行くという意味だったと感じます。
その後の歌詞もいつか再会すること願っての気持ちが綴ってあると思うととてもしっくりときます。
僕はもう迷わない、そう決めた
ここからは私自身のことです。
私はずっと悩んでいました。
人生このままでいいのかなと。
私には目標があり、それを実現するために海外で働いています。
しかしここは私が目指した場所ではありません。
それでも労働環境もいいし、いい人ばかりだし正直このまま夢を諦めて住み続けても幸せなのではないかと感じました。
こんな私の悩みは夏生ととてもよく似ています。
夏生は水没する世界を救うという目標から逃げて舞台となる田舎町にやって来ました。
そこでアトリと出会い、住民たちと仲良くなりこのままここに住み続けるのもいいと考えるようになります。
そんな夏生のことをアトリは嫌いだといいます。
それは本来の目標を諦めて目の前の安らぎに浸っているからです。
そして最終的にアトリと別れた後に夏生は町を出て再び目標を達成することとなります。
この夏生の姿は自分ととても重なり、自分も目標に向かうことを決めました。
オープニングの歌詞はアトリと別れた後の夏生の心情を歌ったものと先ほど触れましたが、それがそのまま私の心境にもなっていました。
サビの歌詞には「僕はもう迷わない、そう決めたんだ」とあり、私も悩むのを止める決心がつきました。
そして私は再び自分の夢に向かって歩き始めています。
紺野アスタさんに感謝
この作品は私の人生に決意を与えてくれるものになりましたが、もう一つ別の作品も私の人生に大きな影響を与えてくれました。
それが冒頭にも紹介した「この大空に、翼をひろげて」です。
そしてこの二つの作品のシナリオを描いたのが紺野アスタさんです。
正直そのことを知らずに二つをプレイしていたので、後から同じ方だったのだと知った時はビックリしました。
二つの作品を通じて私の生きる道標を再確認させてくれた紺野アスタさんには感謝しかありません。
一期一会の儚さ
この物語はアトリと出会ってからの45日間、カレンダーで言うと7月中旬から8月30日までのひと夏の物語を描いています。
その中でアトリや学校の仲間など多くの人と出会い、ともに時間を過ごしますが夏が終わったら夏生は自分の目標のために町を出てしまうのでここでの生活も終わりを迎えました。
最終的に夏生は自分の最期の一日をアトリと過ごすことからこの夏は特別だったことが分かります。
たったひと夏のことだけど、たしかにそこにはアトリや仲間がいて、それはもう二度と揃わないメンバーなのだなと思うととても儚いことに思いました。
そう思うと今自分の側にいる人、家族でも友達でも職場の人でも、今この時しか一緒にいられない儚いものなのだと感じ、一期一会をもっと大事にしようと思いました。
まとめ
以上がATRI -My Dear Moments-の感想です。
本当に素晴らしい作品に出会えたなと今でも思い出すと満足感が湧いてきます。
あの作品の世界にもう一度飛び込みたいと思っているのでアニメがとても楽しみです。
余談ですが、YouTubeの公式生放送でアトリ役の赤尾ひかるさんが付けたキャッチコピー「お前がいなきゃ 俺の人生終われない 高性能 ADV」がもうまさにそれ!!と共感しっぱなしでした。
プレイし終わってからも主題歌に入り浸ったり、YouTubeで動画を漁るほどハマったゲームはほとんどなく、それほど素敵なゲームでした。
私が大好きなBUMP OF CHICKENの「宝石になった日」と併せたMAD動画もおすすめです。
それでは!